海の黒鍵
瑞海
新月の夜は
決まって聴く曲がある
深い海に溶けていくような
ピアノの音を
聴きながら
海辺に歩いて
拾い集める
黒の欠片
袋いっぱいに
溜まった黒を
涙と一緒に飲みながら
生きてゆく
ずうっとずうっと
生きてゆく
海に膝まで入ると
爪先から黒が溶けてゆく
海に攫わせないように
私を支えながら
溶け続けている
この黒は
いつか壊したあのピアノの
その一部だったのだと
悟る今は満月
涙が止まらなくなり
結局自分に戻ってきたのだと
気づく時には
もう海の底
自由詩
海の黒鍵
Copyright
瑞海
2015-09-29 21:48:56