さよならの挨拶を
いとう
子供たちの手はあまりに小さく
死を乗せるには頼りない
持て余された欠片は
静謐な砂漠の砂のように
足元に溢れ
踏み潰され
「見た? 見えた?」と誰かが囁いている
「アレかな? よく見えないよ」
「あそこ、なんか囲まれてるよ」
背の低い児童が慌ててジャンプする
「静かに!」と怒号が聞こえる
さようなら
君のその行いは
君の思うとおり
もちろん誰にも届かず
君にも届かず
その距離はあまりに遠く
その意味さえ失われている
「今日はもう帰れるんだって。先生が言ってた。ラッキー」
「警察来てるよ。パトカーだよ」
「すごい、また来ないかなぁ」
「ヘリコプターうるさいよ」
「テレビ映るかも。帰ったら見よっと」
下校の時間です
せんせい、さようなら
みなさん、さようなら
厳戒の中、どこかでシャッター音が鳴る
その瞬間だけ
緊張が走る
「かもざき先生死んだって」
「うそ? マジ?」
さようなら
手のひらに残った一片の
欠片の