僕たちの冒険
itukamitaniji
僕たちの冒険
年甲斐もなく夜更かしをして 寝ぼけ眼で
真夜中にやっていた とある映画を見たんだ
汽車にはねられて 死んでしまった青年の死体を
探す冒険に出る 心に穴を抱えた少年四人のお話
僕が子どもの頃に見た映画で 懐かしく見ていたんだ
もう何度も見た映画だから 内容はもう覚えてしまって
次の展開その次の展開 全部先読みすることができるけど
見るたびに感じることが変わってくる 不思議な映画だった
色々なことを思い出す そんな映画を見た子どもの頃
幼い僕たちは 心躍るような冒険に憧れていた
あの頃の僕たちにとっては 全てだった小さな町
心に隙間ができないように いつだって何かを探してた
排水溝のトンネルに 潜り込む冒険がある時流行った
誰が一番奥まで行けるのか その勇敢さを競い合っていた
そしてついに 最奥までたどり着いた勇者が現れて
その勇者はこう言った 「一番奥にアメーバ星人が居た!」と
なんのこっちゃ 嘘だろうって当時の僕は思ったけど
勇気がなくて 結局僕は最奥まで行くことができなくて
確かめることができないまま 冒険は終わりを迎えた
ひょっとしたら本当に居たのかな アメーバ星人は
僕の小さな町には UFOがよく目撃されることで
ちょっとした有名だった そんな時に限って僕たちも
誰の目撃談が一番リアルか 競い合っていたし
誰が言ったか 山の向こうにUFOの秘密基地があるらしかった
誰の冒険が一番勇敢か 誰の話が一番わくわくするか
競う合う中で ランキングをつけられてしまう気がした
ひとつの冒険が終わっても また次の冒険を探した
そうやって繰り返し続けて 気づけば大人になっていた
誰もが旅立った後の 誰もが居なくなった町に
取り残されてしまった いや違う、そうじゃないんだ
自分で残ったんだ 年甲斐もなくそう言い続けている
そうやっていつまでも 何かを待っている人たちがいる
そしていつか気が付くんだ 冒険ってのはつまり
遠くに行くことなんかじゃなく 不思議を探すことでもない
ごくごく繰り返しの毎日でも ありふれた日常に潜んでいる
自分を探すこと つまりその日常そのものなんだと
レールの上を歩いた少年たちは やがてゴールにたどり着いた
その果てで気が付いた答えは 最初とは違っていた
それは期待した答えとは違って なんだったんだって思うけど
それでもちゃんと また歩き出しで家に帰ったんだ
もしも僕たちの冒険も そういうものなのだとしたら
どこかにある本当の答えを 探し続けなければならない
アメーバ星人の真偽を UFO秘密基地の在りかを
本当の自分とは何者なのか 生きる意味とは何なのか
寝ぼけ眼で見ていた 映画はいつしか終わりを迎えた
素敵な歌とともに 冒険は終わったんじゃなくて
きっと四人の少年は また新しい冒険の旅に出たんだ
それはきっとまた別のお話 誰にも知られることはないお話