至福
小川麻由美

あなたの愛情が重いと
夫に言ってしまった

涙が出るがままに
小さなノートの片隅に
小さな詩を書いた
暴力的な詩をカモフラージュにして

「伴侶よ幸せになっておくれ
あなたこそ幸せになる権利がある
自分では気付いていないと思うが」

それを 目にした夫
「君がいてくれれば幸せなんだよ」
ありったけの勇気で
ありったけの思いをぶつけてきた

私は驚き そして途方にくれる

これが幸せなんだと噛み締めながら
私は私のままで生きていこう
夫にたくさんの迷惑をかけつつ
器からこぼれ落ちる程の幸せ

強い薬にも耐え
重い脚を引きずり
一滴一滴の点滴に祈りを込めて

夫の愛情は決して重いのではなく
広いのだと身に染みた
こんな私にとっては
奇跡のような日だった


自由詩 至福 Copyright 小川麻由美 2015-09-25 06:57:58
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