命ジジイ
花形新次

命が惜しいのお、命が惜しいのお
命が惜しいのお、命が惜しいのお

ジジイは98年も生きているのに
命が惜しくてたまりません
命のためなら死んでもかまわないとすら
思っています

ですからこの国が戦争に巻き込まれるなんて
絶対に嫌なのです
今日も国会議事堂前で
身体に負担のかからない範囲で
寝ながらデモに参加しています

ジジイは先の大戦でも
大量の醤油を飲むという画期的な手法を編み出し
徴兵検査不合格を見事勝ち取りました
ジジイの村の若者はみんな戦争で亡くなりましたが
ジジイだけが無事生き残ったのです

先だっては東南アジアを旅行し
かつて多くの日本の若者が命を落とした地で
おさわりOKのカラオケで楽しんだりもしました

醤油まで飲んで生き延びた
この命
決して手放してなるものか

ジジイはおねえちゃんの
お尻を撫でながら
死んでいった若者に誓ったのでした


自由詩 命ジジイ Copyright 花形新次 2015-09-19 07:28:48
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