疼き
ヒヤシンス


 あてどもなく私は私だけの絵画を求め歩いてゆく。
 町を抜けると海に出る。
 なぜだか私の見る海はいつも孤独に満ちている。
 停泊している貨物船に群がる鳥たちの声も聞こえない。
 
 待ち人のあてもないまま海浜公園のベンチに腰を掛ける。
 この海はモノクロームの無声映画のようだ。
 岸壁に寄せては返す波すらもぎこちない。
 一コマを切り取るのは容易いがどの場面にも匂いが無い。

 見慣れた風景に手を伸ばしても何も掴めない。
 こんな場所から抜け出す勇気。
 私にはそれが必要なのだ。

 私が苦しかろうとそうでなかろうと海は動じない。
 私には大海原が砂漠に見える。
 ああ、私は芳醇な匂いを欲しているのだ。


自由詩 疼き Copyright ヒヤシンス 2015-09-19 02:45:59
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