風を頼りに
千波 一也



風を頼りに生きている
それは
揺るがず、歪まず、
だれから教えられることもなく
透明な命令として
継がれゆく

風を頼りに生きている
風がそれを望まなくても
わたしたちは
そういうふうに出来ているから
たとえ風から裏切られても
虐げられても
それさえ頼りに
生きている

だれかが風を疑ったとき
あるいは風を諦めたとき
そこに通う雲も重みも滴りも
風以外のなにものでもないのだ、と
思い当たるから
命令はなお透けてゆく
とおく、貫くように
真っ直ぐ
ひろく

つぶさにはわからなくても
古い約束さながらに
わからない全てを許されながら
試されながら
諭されながら
気付けばいつしか
とおく、連なるように
真っ直ぐ
あわく
風を頼りに生きている







自由詩 風を頼りに Copyright 千波 一也 2015-09-18 22:58:46
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