呪文
kaz.
削除してください、
削除し、てください、
ぼくの、ぼくの、
ああ、ぼくの止まり木には、葉がない、
歯がない、ぼくの顎には、
だくてん、と、
どんてん、の、
はつわ、ができない、
うつわ、だった
稲妻の止まり木に、
灰皿を干して、
ごふ、ごふ、護符、と咳き込むと
みかちゃんと、しんちゃんが、
合体して、
半ちゃんになる、月の、
こぷ、こぷ、こぷ、と
表面に冷え固まった、
古風な嘶き、
否、なき妻を思う
ほく、ほく、発句の、
ない、世界へ
ぼく、ぼく、勃起の、
ない、世界へ
暗転、寒天、カラン、天、
晴れ渡る、世界へ
罰は、受けなさい、
発話、しなさい、それが君の運命さ
三日月と新月の間の裂け目から満ち欠けは始まる、
満ち欠けの始まった卵黄が木にぶら下がるように稲妻は止まる、
卵黄から垂れ下がった卵白が枝に引っかかるように灰皿は干される、
時は過ぎ去った、そして半月になる
ぼくらは書かれているものの先を読むことができる、
何に導かれるでない、垣に導かれるまま隙間から覗いてしまう、
一人の少年が目撃した女の子の裸が、
少年の読んだどんな文脈にもない明るさで翻り、
ある男の陰茎と重なり合うときのように、
ぼくらは先を読む、
その子は将来、少年の妻となるべき女だったのだ、
さらに先を読む、
少年は、今月面にまで沸騰しているのだ、
そして最後に、
きれいに洗われた少女から、発された言葉が、
罰は、受けなさい、
発話、しなさい、だった
三日月と新月の間に彼女の月経はなく、
満ち欠けを終えた卵黄は淫らに枝をぬめらせて、
暗雲の中で稲妻のようにかかやいて、
ほくはあのそらかいちはんうつくしいとおもた、
ほくはあのそらかいちはんうつくしいとおもた
灰皿の縁から、黒焦げになった塊が宙に舞う
ばらばら、ぱらぱら、天だらけ、
削除してください、
削除、してく、ださい、それがだめなら、
錯書でもいい、ああ、
歯がないぼくの顎が、ひいひい鳴り響いて
ぼくの止まり木には葉がない、
がらぴい、がらぴい、
ぴしゃん、がらぱんごろす、うんちょげら、どりゃばらせぼたおん、
罰は、できない、
発話、できない、それが発句の、運命