夜へ 礫へ
木立 悟
薄くうつろうもののかたまりが
轟々と夜のはじまりをゆく
剥がれかけた
光の重なり
見えたり消えたりするものが
左側をしたたり落ちる
布や布状のものすべてが
四角い灯りにゆらめいている
夜が夜を折りたたみ
他人が作った曲ばかり
美しく奏でる人々が
巨きな隙間に埋ずもれてゆく
すぐに消える泡たちの
影だけが残り 重なりつづけ
水面は暗い輪に満ちる
穴のあいた灯に満ちる
受動的な夜の生きもの
雨の後を追う声の主
水たまりを結ぶ長い尾の先
夜に触れる無数の指
径に積もる光の径
街に重なる水の地図
切れない鋏で切ってゆく
小さな小さな
暗い鉱の降りそそぐ夜