ペン
あおい満月

私から、
なにかが抜け落ちている。
そんな気配がして
足元を見ると、
枯れたことばの欠片たちが
犇めきあって
迷路をつくっている。
そのなかで、
かすかな息づかいを聴く。

ことばの息吹、
ことばの鼓動、
ことばの呼吸、

ゆっくり、
皮膚に染み込ませる。
あるいていくのだ。
目をあけて
飛び込んでくるものが
血に濡れた
人の倒れ込む街だったとしても、
かいていくのだ。
いつわりのない、
あらゆる風を掻い潜った
その先に見えた真実だけを。

右手には見えないペンが握られている。
ぎらぎら、
月明かりに光る刃のようなペンが。
私は駆けていく、
なにかが抜け落ちていく
ことばの影を追いながら。
風が吹く。
目を開いた世界が
海にのまれていく。


自由詩 ペン Copyright あおい満月 2015-09-14 20:46:04
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