秋色夜曲四 <追憶は けして消えない>
南無一


ひとりきりの 秋の 夜更けに
天井の蛍光灯も テレビも 消して
ろうそくを ひとつ
灯してみましょう
淡い おれんじ色の炎が
闇を ゆらして
ゆったりと おどけはじめる

開け放した窓からは ときどき
風がやってきて
炎を はげしく ふるわせる
そんな風と 炎との
おどけダンスを 眺めながら
ぼくは 何杯目かのグラスを 口にして
すっかり 酔ってしまっている

やがて ろうそくが尽きて
ふっと ひとつ 短い溜息を ついて
炎が 消える
ぼくは 重たい闇に
どんよりと つつみ込まれる

夜の空には
星が ぽつんと 咲いている
遠い日の
きみの笑い声が きこえてくる

過去は けして
帰らないだろう
しかし
追憶は けして
消えないだろう




自由詩 秋色夜曲四 <追憶は けして消えない> Copyright 南無一 2015-09-11 23:23:51
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