そこをなんとか
かんな
朝まで、そこをなんとかは木漏れ日に紛れていて、太陽が沈んでから、こっそり雫にもたれていた。風が強い日は土の中に身を隠した。大地はやさしく守ってくれる存在で、ぬくもりが恋しかった。誰かに甘えたくなったとき、そこをなんとかは海に潜った。寂しさを受け止めてくれる広さにただ泣きたかった。か細い声ででそこをなんとかいつもは泣いた。かき消すように雨が降りやまなかった。空がいじわるだとそこをなんとかは言った。兄と姉がいて、兄はそこをなんとかをよく心配した。姉は面倒見がよく、そこをなんとかの世話をした。三人はよく一緒にいて夕日を眺めるのが好きだった。そこをなんとかには好きな人がいた。睫毛が長く、目鼻立ちのはっきりした人だった。きれいすぎて触れられずに、手が震えた。その人の中でそこをなんとかは果てたかった。終わりがすべてにもたらされるものならば、愛する人の中で生まれ変わりたい。そこをなんとかはその願いを星に告げた。