ハンガーストライキ
末下りょう


顔にハンガーをはめ(頭上と顎下で固定、ハンガーやや伸びる)
公園に出向く 小さな噴水や、銅像、
滑り台、鉄棒、ブランコなどがあり
ベンチには女子高生が座っている 犬を連れたおじさんもいる

インターネットでなんでもかんでも調べるというみみっちいことはしない
ハンガーストライキといえばこのスタイルだと誇りと覚悟を持ってのぞむ
例外はない できればシェパードを隣りに従わせたかった
お腹が空くとヤダから菓子パンとエロ本を携えた
抜かりはない 腹が減っては戦はできぬ
いま風が我が血管をトラとなって吹きぬけていく タイガーだ
トラ ザ タイガーだ
ハンガーの使い手は武田鉄矢だけではない
レボリューションは 儚く 脆い
しかしハンストもパンストも破れてからが勝負だ
破れた夢から星は生まれる 自由こそすべてだ

罵倒は一致点を探すためではなく対立をより強化するために用いられる
なので罵倒する
洋服よ、お前ら結構こわいぞ。
なんだその形は、人間みたいじゃないか、だらしない
重力よ、きみは真性のストーカーだ。
ストーカー歴何年目ですか、しつこくてキモいぞ

ハンガーは洋服のエゴを維持させようと重力の愛に抗う労働者だ
ハンガーは洋服のエゴと重力の愛に引き裂かれた奴隷だ
形崩れはいつだってハンガーのせいだ
ハンガーは戦わずして敗北させられた 一滴の血も流さず
これはじつに恥ずかしい安楽死だ

ぼくは鉄棒にぶらさがり
一つの乳酸の溜まった白バラの無名のアゲインストとしてハンガーを代弁する
スフィンクスのような顔で地面をのぞいたとき
大地の母よこんにちはと笑いかけよう
そのときはエロ本のグラビアが微笑みかけてくれるだろう
もうすぐ晩ご飯の時間だから帰ろう
裸の女のブロンズ像の乳首にハンガーをかけて帰ろう
いずれカラスの巣材になるかもしれない
しかし悲しむことはない それがレボリューションというものだ
自由、平等、博愛、
そしてぼくは明日を恐れない



自由詩 ハンガーストライキ Copyright 末下りょう 2015-09-08 21:23:41
notebook Home