深夜に
非在の虹

夏のあとさきもなく滝が落ちる。

滝の水流が私の口元までほとほととおとないて

落ちる。

冷めるものは冷めるだろう。

私の行く手を遮るのは過去ではない。

地虫のような羽を持つ落ちてゆくもの。

音もなく姿もなく落ちてゆくもの。

私の体を冷たい手が抱く。

この手に導かれて

抗いもせず私は姿見の中に姿を隠す。

裏側に果てしもなく流れる落ちる水。

喉元を下る水。

深夜の水道の栓を幽かに締めて

寝床に沈む。


自由詩 深夜に Copyright 非在の虹 2015-09-07 23:05:45
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