うつうつ
そらの珊瑚

雨の夜
国道には死があった

帰り道を急ぐ車の
その一台一台に生があるその対極に
或いは
その隣りに

ぴくりとも動かない人間の脚はまるで
精巧なマネキン人形の部品のよう
アスファルトに散らばったガラスの欠片が
ヘッドライトに照らされるたびに
美しく光ってみせる

死に急いでいるのだろうか
人は
急がなくとも死ぬし
急がなくとも
人は
どこかに帰る動物なのに
どこかで眠る動物なのに

車内はエルトンジョンの声であふれていて
白いハンドルは鬱を吸ったように重い
闇に取り付けられた窓に滲んでいるふたつ月
世界のコンビニの常夜灯も
うつうつと
そんな夜が明けるのを待っている


自由詩 うつうつ Copyright そらの珊瑚 2015-09-07 21:54:15
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