臍帯
イナエ
箪笥の奥深く秘められていたいくつかの小箱
おそらく母の物であろう歯の欠けた櫛に
出合ってわたしの心が波立つ
そして 夭折した兄たちの名に混じって
ボクの名が乾ききった小箱
それはぼくと母を繋いだ橋であった
ふたりの幼い兄を追って
幼児のぼくに面影さえ残さず消えた母
羊水に浮かぶわたしに
母はなにを伝えたのだろう
母の去った道を
何度探し求めたことだろう
だが道は何時も閉ざされていた
今 眺める乾燥した管も
ことばの路も
視線のはいる隙間も閉じている
困惑して目を上げた先に
鴨居の母の眼