黄昏の会瀬
愛心
しにがみにあいました
しにがみは おおきな かまをふりあげて
わたしのくびを はねようとしました
おもわず めをぎゅっとつぶると
いつまでたっても いたみがないので
おそるおそるめをあけました
しにがみは かまをじめんにおとしたまま たちすくんでいました
「如何に美しき娘か。黄泉へ送るは惜しい」
とぎれとぎれにききとれたこえは
むかししんだ おさななじみのおとこのこのそれに
とても よくにていました
そのせいか
にげることもできず
しにがみはうなだれ すわりこむと
てもとにおちていた かまをにぎりしめ
そのまま かたかたと ふるえていました
「●●●くん」
もうわすれたと おもっていました
おさななじみのなまえをつぶやくと
しにがみのふるえはとまり
まっすぐにわたしをみつめて
いきをのんだ その せつな
しあわせそうにわらいました
むねをこがすような
たいようがとけだしたような
あつくもえるゆうやけをのこして
しにがみはきえました
かれは きえました