かき氷の遠い夏の音
竜野欠伸

かき氷を
噛み締める音が
透き通る
氷の粒の結晶は
ちょうどひかりが
零れおちるみたいに
花火の黄昏にある音のように
ころんころんと
ふたりの記憶のなかでも
響いている

ずっと遠い夏空に
消えていった
かき氷を噛み締める
かりんかりんとした
真夏の音と
部屋を改築した大工たちの
たくさんの汗の粒は
もう海の底にまでたどり
着いたのだろうか

遠い夏空に浮かんでいた
雨雲の匂いを
運んできた緩やかな風が
清々しい柑橘の薫りみたいに
いつまでも
さらりさらりと
吹いている気がして
うちわがふたつとも要らずに
ずいぶんと涼しい
秋の透明な夜空は
すでに近くにも
疎らな雨跡とともに
訪れている

喉越しに
かりんかりんと
溶けていた氷の粒には
搾り出された果実から
ひんやりとした果汁が
含まれていて
遠い夜空の
果てを想う


自由詩 かき氷の遠い夏の音 Copyright 竜野欠伸 2015-08-31 20:42:41
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彼女に捧げる愛と感謝の詩集