川岸
るるりら

家の目の前が川だから 安心だ
泳ぎ疲れても すぐに家に帰ることができる
天井川沿いに建つ我が家までは
ほんのわずかの距離なので
帰り道は スクール水着のまま 裸足で家に帰る
焼けついたアスファルトの土手を裸足で 歩くと
いつもの ピッチを忘れ とびはねながら
道をゆく

裸足で世界を歩いているのは
わたしだけじゃない
海へつづく 土手の上を
たくさんの蛙が 登ってきている
蛙の世界は 私の世界とは まったく別の世界だとは
思えない
無数に産み出されたゲコゲコという濁点ばかりの歌が
人々の線引きである田んぼの畝などは おかいまいなしに
蛙にとってかなり高い高さの土手を
なんなく飛び越えて 車道に登ってくる 
蛙で 溢れる道を わたしも 裸足で歩く

とけてゆきそうなアスファルトに 
蛙の何匹かは 干からびている
水着からしたたる水の後も わたしの心も 蛙にカエル
あるくピッチも ビチビチ跳ねる

わたしたちは、海というゲートを通過してきた、のか
わたしたちの故郷は この道の先にある海なのか
とにかく叫ばずにはいられない「アジっ アジジ」 
わたしが、蛙と同じ たましいでアスファルトを飛び跳ねる と
水着から水が滴り、ぴしゃり 尾鰭のような音がした


自由詩 川岸 Copyright るるりら 2015-08-31 00:21:08
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