聖域
ただのみきや

見開いた瞳が何もかも拒む時
舌が千々に裂け石となり果てる時
世界がおまえとおまえ以外に二分される時
おまえの奥深く
開く扉があり
時間の揺蕩う土地があり
虚ろな空があり 明けのような暮れのような
光が包む 広い園があり 花が咲き 乱れ
清らかな流れがあり 人の途絶えた 古城跡
枯葉の積もる 墓地があり
おまえの名も 刻まれて
そこにはおまえが生ある限り
無意識下で 焦がれ 探し 恋慕う
ひとりの少女の幽霊が
決して 視線すら 交わることもなく
風に 髪を揺らしながら
時に憂い 時に微笑む
永遠に ふれることも 
言葉を交わすこともない 幻影の少女が
おまえの意識下の全ての恋の原型が 
純粋で残酷な美の幻が
名すら纏わぬまま 原初から
鮮やかに開いた 傷口が
そこに言葉を相殺し
現世の圧力に拮抗する
風の歌声響く空洞が
枯れ木が月の光を抱くよう
腕をすり抜けて往く
永遠の少女が



                 《聖域:2015年8月23日》








自由詩 聖域 Copyright ただのみきや 2015-08-29 17:58:43
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