ゴキブリ
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お集まりの皆さま方、この度は、日本G研究学会シンポジウムにお越しくださいまして、誠にありがとうございます、G研究学会会長の、五木田振夫でございます。

我々、G研究学会、通称G研は、皆さまはもうすでにご承知かと存じますが、皆さまの忌み嫌う生き物である、ゴキブリについて日夜研究しております。言わずもがな、G研の"G"とは、ゴキブリをローマ字表記したその頭文字を表しております。

学会が発足した当初は、"日本ゴキブリ研究学会"を名乗り活動しておりましたが、この名前があまりにストレートすぎた為、気分を害する方が多く居るとのクレームがございまして、学会名の改名に至ったという経緯がありました。


さて、本日のシンポジウムの主題は、【ゴキブリのワープ行動と、その応用の可能性について】でございます。専門的な話に関しては、後の者の発表に任せることとしまして、私は簡単に概要を述べさせていただきたい所存でございます。


ゴキブリが地球上に生まれたのは、今から3億年も前になります。それだけ大昔から存在していたにも関わらず、絶滅することなく存在しているとは、驚異的な生命力と言えます。しかも、あまりその姿形は変わっていない、ということにもまた、驚嘆せざるを得ません。

皆さまも、ご経験お有りかと察しますが、日頃の生活の中で、思わぬところでゴキブリに出くわすことがあります。台所、トイレ、お風呂場、自室など、至るところに、いつの間にやら、どこからともなく出現します。誰もが驚き、気分を害する瞬間だと察します。

さらに、素早い動きの貴奴ら、駆除しようにも、我々はその姿をすぐに見失ってしまいます。まさに、煙を巻いたように、あっという間に消えてしまうのです。

我々は、このような貴奴らの行動の中に、ワープ行動の可能性を見出だすことに成功しました。簡潔に述べますと、ゴキブリは移動手段として、ワープ行動を行っているのです。つまり、瞬間的に、離れた地点を自由に行き来することができるのです。突然どこからともなく現れたり、かと思えば急に居なくなったりする、その実態はワープ行動だったのです。これを我々は、"Gワープ"と名付けました。


ご存じの方もおられるかと存じますが、ゴキブリの生態として、窮地に立たされた時に、そのIQが300を越えることが知られています。このことは、人間のIQの限界値がおよそ160であることを踏まえると、それを遥かに凌駕する、驚異的な数値であることがお分かりになることでしょう。

この辺りは、未だに解明されていない部分も多く、追って研究している次第でございますが、我々の見解は、一時的なIQの爆発的な跳躍が、ゴキブリの脳に何らかの影響を及ぼし、瞬間的にGワープを可能にしているのではないか、というものです。

人間の脳みそは、その10パーセントしか使われていないと言われています。ゴキブリに関しても仮にそうだとするならば、急激なIQの上昇は、その脳のリミッターを外す役割を果たしているのではないかとも、我々は考えております。

ともすると、このGワープの原理が解明されれば、同じ脳をもつ生き物であります、我々人間にも応用できるのではないでしょうか。我々は、その可能性に大いに期待をしつつ、一刻も早い解明を急いでいる所存でございます。


我々は、まず声を大にして言いたい。

Gワープは、あります!

本日は、Gワープに関して、我々の日頃の研究の成果を、余すところなく発表していきます。まずは、貴重なGワープの瞬間を収めた映像を、皆さまにご覧になっていただきます。それでは、前方、大スクリーンにご注目ください。


自由詩 ゴキブリ Copyright itukamitaniji 2015-08-28 02:08:11
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