Fanfare for the Common Man
藤原絵理子


若い父親は 汗で髪の毛が張り付いた子供の頭を撫でている
母親は 胸に抱いた汗まみれの子供を 一生懸命あやしている
車窓に青々と広がる田んぼに 草取りの白い長袖シャツと麦藁帽が流れ去る
当たり前に生きている 尊い瞬間が連続する

乗り換えに急いだ彼女は 階段で足を踏み外しそうになる
下から登ってきた彼は とっさに彼女を支える体勢を取る
エレベーターの扉を開けたままにして 老婦人は車椅子の青年がやってくるのを待っている
切符の買い方がわからない老人に 駅員が一生懸命説明している

何の変哲もない 平凡な人々が
必死に生きている 侮りもせず
ささやかな幸福の それぞれの宇宙の中で

あたしは ファンファーレを鳴らしたくなる
当たり前の生活者たちに 高らかに堂々と
イアフォンの中で E,L&Pがプレイする その音楽を




自由詩 Fanfare for the Common Man Copyright 藤原絵理子 2015-08-27 22:15:54
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