片胸
あおい満月

夕方、
車中で左隣に座った老人に、
肩で殴られた。
私のなかで何かがメラッと揺れて、
痛い!
と両手一杯に 石をぶつけだが、
老人は寝入ってしまった。
私には沢山の武器があるが、
誰の視線にも
この武器は振りかざせない。

刺を帯びた言い訳が、
駅のゴミ箱を
3Dの虹になって
ぶれながら漁る。
誰かがビリビリに破った
片胸を露にした女が、
泣きそうに此方を視ている。

(ばかやろう!)

吐き捨てた瞬間、
冷たい秋風が
鼻をくすぶる。
月が、
雲の手に導かれて
天上にある。
救ってくれるものは
なにもない。




自由詩 片胸 Copyright あおい満月 2015-08-27 20:52:59
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