秋色夜曲一 <虫の鳴く夜は>
南無一


虫の鳴く夜は ベランダの
ガラス窓 半分ほども 開けまして
虫の声なぞ 聴きましょう

虫の鳴く夜は ワインなど
ちびり ちびりと 飲(や)りまして
虫の唄なぞ 聴きましょう

そより そよりと 風も来て
ほってったからだ 冷まさせて
ざらざらざらと ざらついた
こころゆっくり しずませて
虫の唄なぞ 聴きましょう

ゆく夏を 惜しむがごとく
虫は 鳴き
来ぬ秋を 呼ぶがごとくに
虫は 唄う

うつろう季節の うたかたに
いのちの限りに 虫たちは
ただ鳴きつづける ばかりです

部屋の明かりは 消しまして
和紙のランタン ひとつ点け
あわい光りに 包まれて
涼やかな響きに 酔いましょう

人の世の 思惑などは 知らぬふり
虫の音(ね)に 包まれて
ワイン一びん 空けたなら
わたしも 風に なれましょう



自由詩 秋色夜曲一 <虫の鳴く夜は> Copyright 南無一 2015-08-26 21:02:26
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