月と犬と
山人

満月の夜、月はやさしく犬を見ていた
犬は不思議そうに眼をあけ、すっくと立ち
濡れた鼻をしながらあたりを一瞥した
犬は初秋の虫の音を
一心不乱に聞いていたのだが
ふと月明かりに、自らの何かが微動するのを感じたのだ
そうしてわたしは
こうして犬のそばで夜を過ごしている
獣臭のする老犬はにじりともせず
夜を友として座り続けている
それはまるで奇妙な光景で
二人は特に別の生き物と言う風でもなく
仲の良い同士のように
コンクリの上で並んで池の音を聞きながら
夜を過ごしていた
特別なことではない
自然のなりゆきでしかない
あらゆることがそう思えてくる
月は異様に丸かった
その縁が少し滲んでいる


自由詩 月と犬と Copyright 山人 2015-08-25 21:41:06
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