あの手 この手
るるりら

【あの手 この手】

あれは
てあて だったのだろうか
その手に触れた途端
理由の わからない涙が あふれた
どのような ゆえんで  
私がその場に 辿りついたのかは おもいだせない
ただ涙を流したことだけを覚えている
人は なにかを超えると、涙を流す
ことばで表現できるものを 超えて、 私は泣いた

わたしを泣かせたのは手だった
それも作り物の手 
東南アジアの私の知らない国からきた ただの仏像の一部
手首の部分だけの像だった
しらない国の像なんて 見たことがないはずなのに 
わたしは知っていると感じた
説明書きによると「印」とかいう形を結んで いるそうだ
なぜ 涙がでるんだろう
ふくよかな仏像の手
その手を まのあたりにして わたしは なぜ泣いたのだろう


身体ももたない手だけの仏像の前で私は、立てないほど泣けた
なみだが 虹を連れてきた

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れいんぼう
あめんぼう
わすれんぼう

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あめんぼうは きれいな水にしか棲めないそうだ
仏像の手が わたしに触れさせてくれたのものが、何なのか
あめんぼうならば 知っている気がする
あの手は 清らかな イトナミを知っている手だったのではないか
世界の隅々を流転した雨が あがり
ある奇跡的な角度に日が差し込む

すると
わすれんぼうな私でも 
わたしも おおきな存在とおなじ聖なる なにかに
あのとき 触れたのではないのか


じぶんの経験で理解できる範疇を超えた何かに 人は うちふるえることがある
すべての いきとしいける ものたちのすべてが  同時に雨にうたれて
さっばりと すべてを あたらしくさせるような何かに
言葉にしがたい 何か に

あのときのなみだは阿弥陀 私にもさしだされた何かの手が
あ る  わすれてしまいそうでも わすれ
な い


自由詩 あの手 この手 Copyright るるりら 2015-08-24 18:10:26
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