場所
あおい満月

あなたには、
打たれた記憶しかなかった。
言葉の手のひらで、
私の頬や背中や足を、
あなたは何度も打ってきた。

(よろこびのこえを、あげなさい)

ビシ!

(よろこびのこえを、あげなさい)

ビシビシ!

食パンになった私は、
はちみつの黄色い雨を降らされても
三日月になって笑っていた。
心は空洞で、
顔だけは笑顔で。

あなたは苛つきながら、
いつ終わるかもわからないゲームを
楽しんでいた。
煙草を燻らせながら。

今はもう、
言葉の平手はない。
ただ、あの打たれ続けた日々のせいで、
私の右耳は聴こえない。
半分になった森は、
半分の海をうけて
風を浴む。

流木がひりひり、
胸のなかの喉に突き刺さる。
旅をしている。
ほんとうの場所に出会うために。


自由詩 場所 Copyright あおい満月 2015-08-22 09:58:16
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