場所
あおい満月
あなたには、
打たれた記憶しかなかった。
言葉の手のひらで、
私の頬や背中や足を、
あなたは何度も打ってきた。
(よろこびのこえを、あげなさい)
ビシ!
(よろこびのこえを、あげなさい)
ビシビシ!
食パンになった私は、
はちみつの黄色い雨を降らされても
三日月になって笑っていた。
心は空洞で、
顔だけは笑顔で。
あなたは苛つきながら、
いつ終わるかもわからないゲームを
楽しんでいた。
煙草を燻らせながら。
今はもう、
言葉の平手はない。
ただ、あの打たれ続けた日々のせいで、
私の右耳は聴こえない。
半分になった森は、
半分の海をうけて
風を浴む。
流木がひりひり、
胸のなかの喉に突き刺さる。
旅をしている。
ほんとうの場所に出会うために。