樹雨
瑞海




深い森の中で
眠っておりました
頰に雫が一滴垂れて
涙かと思ったら
沢蓋木の葉から落ちる
樹雨でありました

ところで
どうしてこんな森深くに
来てしまったのでしょうか
肌を濡らす霧が
全てを曖昧にして
今にも腰が抜けそうです

森に入ったのは
ひとりだったかしら?

少し頭が痛くなりました
左のほうから
金木犀の香りがして
切り株に腰掛け
また少し眠りました

私を起こす
声が遠くから
聞こえた気がしました
懐かしい声が
どこか遠いところから

ああ、ここに
迷わせたのは
君だったのだった
私を置いて
先にいってしまったのだった

あなたの言葉が
心に溜まって
雫になって
私の心まで
届いています

もうすぐ
追いつく
そんな気がする



自由詩 樹雨 Copyright 瑞海 2015-08-18 22:49:41
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