貴方へ
ヒヤシンス


 時代を超えて鳴り響く鐘の音よ。
 この夏の盛りにやって来る荘厳の響き。
 この身を何度委ねたか分からない魔性の響きよ。
 乳飲み子の眠りを妨げるのはやめておくれ。

 閑散とした町の中でそこだけぽっかりと穴が開き、
 紛れ込んだ異空間の漂い。
 郭公が鳴き、小鳥が囀る久遠の空間。
 快楽を凌駕する永遠のともしび。

 枕を並べる悲しみに互いを理解する。
 落葉松林に白樺は愛を重ねる。
 避けてきた現実が日輪に炙られる。

 今や鐘の音も郭公の鳴き声もない。
 存在だけが経験によって創られる。
 愛しい貴方、忘れられぬ貴方よ。


自由詩 貴方へ Copyright ヒヤシンス 2015-08-18 13:57:29
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