街中の森
ヒヤシンス


 静かな平日の図書館に人の気配はない。
 幾千幾万の蕾たちが花開くのを今か今かと待ち望んでいる。
 私の手の中で花開いた詩集は遠い昔の魂の叫びだ。
 私は今日もまた本の森へと足を運ぶ。

 ある者は恋人へ。
 ある者は皇帝へ。
 ある者は肉親へ。
 ある者は読者へと。

 私はその花びら一枚一枚を吟味する。
 どれもこれも美しさに溢れている。
 生への希望が湧いてくる。

 森はいつしか本物の森になり、
 辺り一面日が差している。
 切り株の一つに腰かけて涙を流すのも良いだろう。


自由詩 街中の森 Copyright ヒヤシンス 2015-08-18 12:42:20
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