庭めぐる庭
木立 悟





こがねいろの扉が
花にふさがれている
ここは何処なのかと
首をかしげている


くゆる くゆる
くゆ るく ゆる
白湯のなかを
ゆるく ゆるく
午後は廻る


雨のあとの中庭に
光の素性の異なるものが立っていて
羽を付けたり離したりしながら
水の無い目で話しかけてくる


花になれませんでした
葉や茎や枝や根
誰も見てくれない
触れるものもない


八本の首が
艮の方を向いている
ずっと朝のままの昼が
名を呼ばれないまま午後にこぼれる


いとおしいのに
近寄れない
何が何を分けているのか
何故 花の首を除けられないのか
何故 扉をあけることができないのか


次の次の季節が訪れ
午後は午後にそそがれてゆく
川へつづく石の径
ひとつひとつが夜の芽の径


冷たすぎる手に手を重ね
はらわたの声を聴いている
喉になることのできなかった
永い歩みを聴いている


裏庭へつづくはざまに羽はひしめき
陽のかけらに消えてゆく
扉の前の 名の無い群れ
花に
水の無い目に耳を傾ける























自由詩 庭めぐる庭 Copyright 木立 悟 2015-08-17 08:33:13
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