メモリーモーテル
ヒヤシンス
散財につぐ散財でまったく有り金がなくなった。
ギターすら売っちまった。
あとにはおんぼろの車と愛すべき彼女だけが残った。
友達への借金も残ったままだ。
そんなある日彼女を連れて海を見に行った。
ちょうど海岸線に出たところで、カーラジオから流れてきたのは
メモリーモーテル、俺の愛すべきストーンズだ。
彼女はしばらく聴き入って、良い曲だねと言った。
俺は当たり前だ、ストーンズなんだからと答えた。
俺の場合、ストーンズの名盤BLACK AND BLUEは海に似合う。
特にこのメモリーモーテルは別格だ。
彼女は窓の外をぼんやり眺めていた。
ストーンズをもっと知りたいな、彼女は言った。
その一瞬間、俺はこの女を一生大事にしようと決めたんだ。