真夏の骨と雨
竜野欠伸

太陽の厳しい陽射しにさらされて
赤黒く色褪せた
夕暮れを夜空に染める
とても細い雨降りの音は
真夏のRequiemのように
聴こえて微かに哀しい

久しぶりに
ゆったりと
寂しく過ごす夕食
やや透明なグラスワインを
飲み干す前に
まるで海水のような
不思議な薫りが漂う
鮭のムニエルは
もう直ぐに食べ終わるだろう
明日の朝食は
そうめんにしようか

バスが出発する時刻を
案内する一本の鉄骨が
真っ直ぐに伸びている
まるでかつて誰かが吹いていた
錆びた銅色の
古びたフルートみたいに

優しい雨が降っている
ちょうど天気予報は外れて
傘を持ってはいないので
バスを待ち
雨宿りをしながら
ふたりで食事をする
Barの小窓にはバス停と
暑くて雨が降り続く夕空が
映っている

ちょうど故郷の田舎にある
森の奥深く眠っている
誰かの墓地にも
名前だけになった灰色の
真夏の骨が静かに
うずくまっている
たった一匹の母を想う鮭の
本能みたいに故郷を探す
旅の途中で
真夏のお盆に
とても切なく咲く
白百合の花を揺らす風の音をも
かき消しながら雨音が響く
昨日の夕暮れを踏んでいた
しっとりとした誰かの靴音よりも
道なき道が続く夜空の大地は
雨音をしいしいと
はじいている

真夏の昼に降り注ぐ
太陽が照らした大地には
キッチンにある
グリルのなかみたいに
熱く焦がされていて
道なき道を浸す雨水も
やはり生暖かい

磁器の白くて小さな皿には
鮭のムニエルもすでに
真夏の骨となって
横たわっている
何だか涙の味も
少しする

バス停には
やっと人々が
集まっている
真夏の骨が眠っている墓地へ
残暑をお見舞いする気持ちを
そっと届ける道が
続いている


自由詩 真夏の骨と雨 Copyright 竜野欠伸 2015-08-14 19:21:33
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
彼女に捧げる愛と感謝の詩集