歳を取ったハッピーバースデー
宣井龍人
亡くなった翌年の父の誕生日プレゼント
花束はバースデーなメロディ付だった
録音部の端を知らずに千切って
乱雑に放り出したらハッピーバースデー
痛みだらけのハッピーバースデー
それでも何百回父を祝福してくれたのだろう
ちょっとした振動でもお祝いしてくれる
慌てふためき躓いたらハッピーバースデー
ゴホゴホしたらハッピーバースデー
まるで父の方から祝福してくれるようだ
ところがこの頃どうしたものか
ハッピーバースデーが歳を取ってしまった
息も絶え絶えハッピーッ…バ…~スデー
息が続かずハッピーバ…
そのうえ僕のカラオケのようなめでたい音程だ
強制的に苦しい笑顔をもたらしてくれる
父が亡くなり幾度となく訪れた四季
僕も人並みに頭が雪山になった