入道雲
藤原絵理子


遠い夏は旅の果てにある 汽車が鉄橋を渡って
青い駅に着いたら スカートを翻し
湧き上がる雲を見上げて 目を細める
見慣れた飛行機雲が 交差する


引込み線には 背の高い雑草が風に揺れる
何かを避けるために 逃げ場を探して
錆びたレールは ほっと一息ついている
少年が虫取り網を振って トンボを誘う


あたしの知っている夏は
少年だった祖父が怯えた
機銃掃射と爆弾の夏とは違っている


もう今は 昔ではなく
瓦礫と死体は 綺麗に整理されて
彩色された風景は くっきりと濁っている


自由詩 入道雲 Copyright 藤原絵理子 2015-08-13 22:14:43
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