残片
瑞海



海の向こうに
蜃気楼が見えたら
熱帯夜の中で
君の香りがしたら
お水の中に
海月が泳いだら

もう夏の終わり

あの日に
買った金魚は
傷だらけで元気がない
掬い上げたら
水に溶けて消えた

この夏に
君の残片を
残してはいけない
香りも涙も
一つ残らず
本当は記憶からも
一つ残らず

気がつくと
ショパンの
別れの曲を
夜中に必ず
弾いている

もう少し先の
道だって
霞んで見えない


自由詩 残片 Copyright 瑞海 2015-08-13 21:17:55
notebook Home