月を数えて
凍月
おつきさま って、いっぱいあるの?
…どうして?
だっていろんなかたちがあるし、おおきさもちがうから
…でもね、本当は、お月様は一つしかないんだよ
そうなの?
…そうだよ。…だけどね、本当に本当は、月は沢山あるんだよ
科学的に 現実的に
月は一つしか無いらしい
そう聞かされてきたけれど
どうにも僕は信じられない
僕は宇宙飛行士でもないから
実際に真実を見た事は無いし
そんな事は問題でもない
絶対に月は一つだけ と思う人が見上げる月と
月は幾つもあると信じている 子供が見上げるお月様と
狼男が咆哮をあげる満月と
アポロが降り立つ巨大な衛星と
それらが全部 同じハズがない
理性の小瓶が置かれている月と
チーズで出来た美味しい月と
純潔と潔白の神様の月と
僕の中で凍りついた月と
それらが同じ月な訳がない
月はいつもの孤独が寂しくなって
窓に降りてきて過ごしたりする
月はたまには風に吹かれたくなって
水面でゆらゆら揺れていたりする
満月と三日月が同じ筈がない
上弦と下弦が同じ筈がない
十六夜と臥待が同じ筈がない
新月と半月が同じ筈がない
あなたが描く月の姿は
あなたにしかない月のカタチで
僕の想う月は他のどれでもなくて
だから月が一つだなんて、ありえないよ
…だからね
君が信じている限りはずっと、月は一人きりなんかじゃないんだよ
月を数えてみようよ
きっと一つなんかじゃないから