ルトルルル
ハァモニィベル
あしの裏が焼け付きそうな砂の上を
わきに浮き輪を抱えながら
生き物のように往復する波へ向かって歩くとき
ぼくらは〈ビーチ〉を忘れる。
まったく別の場所で
余所余所しく産み出した
接点を欠いた表象でしかない
言説の丘に佇んで
そこに見える景色を思い描くとき
ぼくらは〈ビーチ〉を手に入れる。
ゲートを通過してきた、「生まれながらの
サイボーグ達」は、別段何もしない。
何もしないが、
何もしないでスマホを弄る。
砂浜に埋もれて首だけ出してるスピノザに
ぼくは同じ言葉で話しかける。
「砂浜が昼寝してるよ、ぼくの上で」
至極頷いた彼にはそれがわかる。