金魚売り
末下りょう

(踏切を 一滴ぬらす 金魚売)




一握りの午後の 、


その発声の凹の底で、手の皺のなかの風を冷ましながら
坂をのぼる男


黒ずんだ肌
蝉の腹のような太もも

糞をふくみ 、
吐きだす金魚


太陽は日陰で狂っている



破れた手ぬぐいで頸を拭き、男は坂をみおろす

桶の水は
生ぬるい



天秤竿を掛けなおすと 、
夏がゆれる


なんてことない
ノラが一匹、隙をうかがっている





自由詩 金魚売り Copyright 末下りょう 2015-08-09 22:53:30
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