夏の花
Lucy

戦争を知らない世代の私にとって
原体験は高校1年の夏休み、先輩から渡された一冊の文庫本だった。
原民喜著「夏の花」
爆心地近くに居て奇跡的に生き延びた彼は
五感のすべてに焼き付いた惨状を克明に書き残した
人間が人間に対してなしえた最大限の残酷を
伝えるため
死者の口となり人々がどのようになぶり殺されたかを全て書き終えた後に自死した
生きている意味を他に見いだせなかったから
死者の思いを
苦痛を怒りを嘆きを絶望を
代弁すること以外には
彼は死んでも彼の書き残したものには殺傷力があった
それが文学の力だと思う







自由詩 夏の花 Copyright Lucy 2015-08-08 20:22:33
notebook Home 戻る