プリン ア・ラ・モード
卯左飛四


お風呂で髪を洗っていたら
風呂桶の底でぴちゃりと音がして
鯉の白い腹が光った
押入れを開けたら
冬眠し遅れた熊が
せっせと寝床を作っていた
風を入れようと窓を開けたら
二列縦隊のてんとう虫が
続々と部屋に侵入してきた

どうしよう
何かが狂っている
ともかく外に出たくて玄関を開けたら
見知らぬ男が立っていた
「奥さん新聞はいかがですか」

この世は遙か太古の昔から
おんなじことの繰り返し
新しいことなんてこれっぽっちもありゃしない
毎日新しいことが載らないものを新聞とは呼べない
ちったぁ新しいことを書いてから出直してきやがれ
新聞屋は肩と視線を少しだけ斜めに落とし
静かに去っていった

部屋に戻れば
風呂桶からあふれた鯉がタイルを横すべり
狭い押入れで熊が押しくらまんじゅう
壁はてんとう虫でもうびっしり埋まりそう

ひとまず私は
コンビニで買ってきたプリンアラモードを食べて
一息つくことにしよう


自由詩 プリン ア・ラ・モード Copyright 卯左飛四 2003-11-09 21:07:02
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