市民公園
ヒヤシンス


 遠くで蜩が鳴いている。
 商店の軒先から蚊取り線香の匂いがする。
 祖父との思い出が詰まった公園へ行く。
 そのとき私は自分に見合った石ころを拾い上げた。

 石には歴史が刻まれている。
 私の額にも歴史が刻まれている。
 ふと祖父の皺だらけの手を思い出した。
 祖父は手先が器用だった。

 悲しみにも歴史が刻まれている。
 忘れることなんてきっとないだろう。
 それでも人々は歩んでゆかなければならない。

 最初の一語を記すまで一体どれほどの時間を費やしただろう。
 過去は良い事だけを思い出にすればいい。
 遠くで蜩が鳴いている。


自由詩 市民公園 Copyright ヒヤシンス 2015-08-08 02:03:10
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