市民公園
ヒヤシンス
遠くで蜩が鳴いている。
商店の軒先から蚊取り線香の匂いがする。
祖父との思い出が詰まった公園へ行く。
そのとき私は自分に見合った石ころを拾い上げた。
石には歴史が刻まれている。
私の額にも歴史が刻まれている。
ふと祖父の皺だらけの手を思い出した。
祖父は手先が器用だった。
悲しみにも歴史が刻まれている。
忘れることなんてきっとないだろう。
それでも人々は歩んでゆかなければならない。
最初の一語を記すまで一体どれほどの時間を費やしただろう。
過去は良い事だけを思い出にすればいい。
遠くで蜩が鳴いている。