沈潜キセキ
たけし

硬い硬い残響に
冬の孔雀舞う
優雅に羽広げ
雪原を辿り

遥か突き上げた独立峰は唐突に
曇天の灰色背景に
クリーム色に映える
頂柔らかな円みを帯び

孔雀はもう止めどもなく涙を溢れさせつつ
時折飛び跳ねては進む進む
図らずも遭遇した光景に
滾滾沸き立つ自由の熱

冷気に息を弾ませ
盛んに轟く雪崩の音
彼女はもう理解している
自分が嘗て彼処から大地に飛び降り、今新たな糧を蓄え戻りつつあるのだと

けれど一息に飛び立てない彼女は
深い憧憬の念に襲われつつ動きを止め
これまでの己の軌跡が映像展開されるのを観る
内奥から、内奥に

奇跡の翼がいずれ顕わとなり
魂、天界を目指し
佳麗な身体を離脱するまで
遡行し続ける記憶の河


自由詩 沈潜キセキ Copyright たけし 2015-08-07 21:25:30
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