火葬場にて
草野大悟2

炎は、
はちじゅうはち年の喉ぼとけを
紅蓮に染め、
煙は、
迎えにもこない夫をさがして
透明な森をただよい、
空の底をぬけていく。
 ( うつむく言葉たちよ

股関節のなかで
硬質なまるい宇宙が
つや消しの歩みとなって
冷却していた。
 ( 恥ずかしげ、に

二年まえ
丑年がわたった河原。
むこう岸には、
いちめんのはな、はな、はな、
花、いちめんの。
 ( そよぐ、せいじゃく

船賃六文
、なんて
いまどき
、ないから。
 ( 百五十円、でどう? 船頭さん

腰の曲がった煙の笑い声が、
あかね色の風にふかれて
昇っていく今日、
たしかに、
目覚めている
、という夢をみている。
 ( Auf Wiedersehen ……


自由詩 火葬場にて Copyright 草野大悟2 2015-08-05 21:35:57
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