火葬場にて
草野大悟2
炎は、
はちじゅうはち年の喉ぼとけを
紅蓮に染め、
煙は、
迎えにもこない夫をさがして
透明な森をただよい、
空の底をぬけていく。
( うつむく言葉たちよ
股関節のなかで
硬質なまるい宇宙が
つや消しの歩みとなって
冷却していた。
( 恥ずかしげ、に
二年まえ
丑年がわたった河原。
むこう岸には、
いちめんのはな、はな、はな、
花、いちめんの。
( そよぐ、せいじゃく
船賃六文
、なんて
いまどき
、ないから。
( 百五十円、でどう? 船頭さん
腰の曲がった煙の笑い声が、
あかね色の風にふかれて
昇っていく今日、
たしかに、
目覚めている
、という夢をみている。
( Auf Wiedersehen ……