写真
あおい満月

きこえるものが
みなすいとられていく
みえるものが
みなかすんでいく。
私のなみだを誰も知らない。
ティッシュ箱を並べてみても
素通りされてしまう。
だから私は、
道化になるしかなくて
月夜の窓辺で、
缶を片手に目を潤ませる。

私は無力なのに
片言で話し掛けられた言葉を踏みつける。
私は非力なのに、
胸の奥に溜まった怒りははかりしれない。

焔がひりひりと舞い上がる。

落とした卵が、
焼き上がるような
炎天の続くアスファルトの上で
聴きたいことばは書き消されて
見たい景色は霞んで
声にならない叫び声は夕闇を孕んで、
月が産み落とされる。

その刹那の光景を
収めた一枚の写真は
暴風の晴れた空の下に佇んでいる、
私なのか、誰なのか。


自由詩 写真 Copyright あおい満月 2015-08-04 21:08:46
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