にーにーの知らないこと
りゅうさん
誰からも愛されなかったと嘆くニートが一人
生まれてくるんじゃなかった、と言い残し
ある日首をくくってしまった
それからしばらくして
彼の家に無数の恋文のようなものが届く
郵便局には
宛先不明のラブレターがたんまりため込まれていて
秘密情報保護法のために先方に詳細は伏せられていたのだ
手紙には切ない思いが異口同音につづられていた
どこにいるの、にーにー
会いたいよ、にーにっ
空からそれを見て彼は涙ながらにつぶやく
なんだ、皆人が悪いよ、生きている間に言ってくれればよかったのに…
――閑話休題
たしかに、甘い砂糖菓子のような作り話かもしれない
けどにーにー、キミが知らないことがまだたくさんあるんだよ
行きついて振り返った時にだけやっとわかるようなことが
道の途中の今は
死の国から逃げ出すオルフェウスもスサノオもそうだったように
振り返ってはいけないけれど
という話も無きにしも非ずなので
ぼくらはとりあえず漂い生きる