にーにーの知らないこと
りゅうさん

誰からも愛されなかったと嘆くニートが一人
生まれてくるんじゃなかった、と言い残し
ある日首をくくってしまった

それからしばらくして
彼の家に無数の恋文のようなものが届く

郵便局には
宛先不明のラブレターがたんまりため込まれていて
秘密情報保護法のために先方に詳細は伏せられていたのだ

手紙には切ない思いが異口同音につづられていた

 どこにいるの、にーにー

 会いたいよ、にーにっ

空からそれを見て彼は涙ながらにつぶやく

 なんだ、皆人が悪いよ、生きている間に言ってくれればよかったのに…

――閑話休題

たしかに、甘い砂糖菓子のような作り話かもしれない
けどにーにー、キミが知らないことがまだたくさんあるんだよ
行きついて振り返った時にだけやっとわかるようなことが

道の途中の今は
死の国から逃げ出すオルフェウスもスサノオもそうだったように
振り返ってはいけないけれど

という話も無きにしも非ずなので
ぼくらはとりあえず漂い生きる




自由詩 にーにーの知らないこと Copyright りゅうさん 2015-08-02 13:17:39
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