スナップ写真
ヒヤシンス
夏の日差しを浴びて影が私の前を歩いてゆく。
大通りから一本中に入った林道に避暑客は少ない。
挨拶を交わすのは老人だけで見知らぬ若い友人たちは
まるで私を影だと思っているのだろう。
切り株が剥き出しになっている木陰に腰を下ろし
私は古い友人の詩集をめくってみる。
目深に被った帽子の隙間から汗が滴り、
詩集の上に今夏の記憶を刻み込もうとしている。
もはや避暑地とは呼べなくなったこの村に
古い友人は何を想うだろう。
日本の夏の灼熱におろおろ歩くだけだろう。
道路脇を流れる小川の水に手を浸し、
汗を何度ぬぐっても、小脇に抱えた詩集はよれよれだ。
おーい影よ、どうか私をおいて行かないでおくれ。